誠也さんが私を引き止める事はなかった。


心の隅で“引き止めて”
そう思っていた自分が恥ずかしい。

自惚れていた。


誠也さんは私のことなんて何とも思ってない。
私がいなくなろうが何だろうが誠也さんにとっては痛くも痒くもないことなのだから。



私の心は小さな穴が空いたように。
そこから空気が抜けていってた。

スカスカだった────。



「あ、あの…!」

後ろから聞こえた大きな声に私は振り返った。
そこに立っていたのは風貌はヤンチャだけれども、顔はすごく優しい顔をした男の子だった。

私はその子に見覚えなんてなかった。

「えっと…」


その子は言うのを躊躇っているかのように下をずっと向いていた。

目が泳いでいた。

その子が何かを言いたいのは分かっていた。
でも、その子はハッキリと物事を言わなかった。


「誠……誠也さんとは別れるんですか…」


「あ、え?」


ようやく口を開いたと思ったらこれだ。
なぜ誠也さんが出てくれるかは全くわからなかった。


この子にとって私は誰なのか。
そして、 この子にとって誠也さんは誰なのか──────────。