「お前の目的はなんだ」
「え」
誠也さんの部屋に入って早々にこれだ。
私には誠也さんの言いたいことがわからなかった。
「夜華の奴らがお前を疑ってる」
疑ってる。
私はまだ夜華に馴染めてない。
それどころか疑われていた。
「お前はここに何をしに来た」
私はここに何をするために来た────。
「これ以上ここにいても何も出てこないぞ」
何も欲しくない。
ここにいたい。
母親にだけには殺されたくない。
死にたくない。
その一心でここにすがり付いていた。
すがり付くことで自分を安心させていた。
私は誰にも殺されないよ。
そう自分に言い聞かせていた。
でもそれは単なる私の思い込みでここにいる人たちは私のことを怪しいと思っていた。
「私は──────────」
私の話が終わる頃には誠也さんの顔をとっても歪んでいた。
そりゃそうか。
私、ここには入れなくなる。
そんなのわかり切ってたり
いつかはこうなる。
そのいつかがたまたま今日なだけ。
「あの…」
恐る恐る誠也さんを見つめる。
「お世話になりました」
自分の部屋に戻って荷物でもまとめて────。
あ、私の荷物なんて何もなかった。
全部、誠也さんが買ってきてくれたものだ。
足が震えていた。
誠也さんが何を思っていのかは分からない。
でも、何故か怖かった。
誠也さんに対する恐怖心なのかそれとも、家に帰ることへの恐怖心なのかは分からない。
「待て──────────」
甘美な声が私の体を捉えたかのように動けなくなっていた。
「これからどうするつもりだ」
「家に帰ります。疑われてる以上ここにいれません」
そこから誠也さんは黙り込んだままだった。
沈黙に耐えられなくなった私は歩き始めた。
何を言ってこない。
少し期待してたんだ。
もしかしたら誠也さんは引き止めてくれるかもって。
でもダメだ。
私の耳に残るのさ誠也さんの声だけだった。