青磁は「おう」と言って起き上がった。


「腹へった。お、うまそう」


そう言いながら私の手もとを覗きこんでくる


「失敗してたら、ごめん」

「え、なに、お前が作ったの?」

「あー、うん、まあ……」


青磁には、朝ごはんを持っていくとしか伝えていなかった。

手作りだと思っていなかったらしい彼は、「へえ、すげえな」と目を輝かせる。


「どれ、お手並み拝見」


手を伸ばして、ひょいっとサンドイッチをつまむと、無造作に口の中に放り込んだ。


青磁の性格を考えたら、たぶん、まずかったらまずいと容赦なく口にするだろう。

どきどきしながら待っていると、全部飲み込んでから、にかっと笑って、


「うまい!」


と言ってくれた。


よかった、とこっそり胸を撫で下ろす。

サンドイッチは、休みの日のお昼によく作っていて、その中でも家族にいちばん評判のいい具を選んで作ったのだ。

頑張った甲斐があったな、と嬉しく思いながら私もサンドイッチを手に取る。


少し悩んだけれど、やっぱりマスクは外せなくて、少し浮かせて隙間から口に入れる。

すぐにマスクを元に戻して、サンドイッチを噛んでいると、横からの視線を感じた。


「まだ駄目なのかよ」


彼の問いがマスクのことだと分かって、私は小さく頷く。


「ふうん。食いにくそ」


さほど気にもしていないのように言って、青磁は豪快にサンドイッチにかぶりついた。