「今日はどこいくの?」
「今日は、連れていきたいところがあるの。私がナビするから運転して」
そこは、隣駅の近くにある海だった。もう秋の気配も濃い浜辺は人影もまばらで、風景からしてさみしさがただよう。私たちは海辺のベンチに座って海を見た。
「俺の生まれた町も海が見えるんだ。もっと穏やかだけど人はたくさんいるかな。夜景がきれいなんだぜ」
と、懐かしそうに言う。
「そういえば、副店長は愛知県生まれなんだよね?実家には帰っているの?」
「ああ、兄さんの結婚が決まって、先月末帰省していた」
「へえ、お兄さん結婚するんだ、おめでとうございます。副店長は結婚しないの?」
「ありがとう。まだ、相手がいないから」
相手がいないって、デート中にいうか?
「私がいるじゃないですかー」
努めて明るく笑って言う。
「あっ、そうか、おまえも女だな」
「いままで、なんだと思ってたんですかー!」
「はじめて怒ったな。もっと、自分に素直にいろよ。その方がおまえらしいぞ」
「おまえらしいって…?」
「気づいてなかったのか?俺もおまえのことずっと見てたから」