『わたし…どうやって生きていけばいいの…っ』

亘さんの表情が涙でぼやけて見えないほど、目から涙が溢れて止まらなかった。
ついには立っていられなくなり、その場に座り込んだ。

しばらく泣き続ける私を見つめたあと、亘さんは私にこう言った。

『二人で生きていたら、いつか必ずどちらかが先に逝ってしまう』

亘さんはフェンスの向こう側を見つめながら、話を続けた。

『置いていくほうだって辛いが、置いていかれるほうはもっと辛い。これからずっと、この悲しみを背負っていかなければならないからな』

これからずっと、朝日が居ないという現実を受け入れて生きていかなければならない。
そんなこと、私に出来るのだろうか。

『もし逆の立場だったら?置いていくほうだったら、彼にお前のような悲しみを味わわせることになる。そんなの嫌だろう?』

確かに、私はいま暗闇に放り込まれたように行く手が見えずにさ迷っている。
この気持ちを朝日にさせるなんてそんなことできない。

『…はい』

『そしてお前が彼の後を追って自殺したら、お前はお前を知る人間に同じ思いをさせることになる。お前と彼を共に知る人間だったら、二重の苦しみを味わうことになる。それを理解した上で、彼を追いかけたいって思うなら追いかければ良い』

亘さんはずっとこちらを向かず、フェンスの向こう側の青空を見つめていた。
私は涙を流すのも忘れて、亘さんの後ろ姿を見つめていた。







「もうあれから1年以上経った。お前はもうじゅうぶん一人で頑張っている。だから他の人との人生を考えてみてもいいんじゃないか」

今でも、亘さんのあのときの言葉は鮮明に覚えている。
あの言葉を思い出した私は、真っ先に朝日のお父さんが頭に浮かんだ。