「三笠のこと、好きなんだろ」

はじめは彼がなんと言ったか理解が出来ず、しばらく反応できずにいた。
理解が出来たと同時に、私は自分の顔が火照っていくのがわかった。

「……え!?」

私は一気に頭の中が混乱し始める。

「図星か?」

「い…いや、待ってくださいよ!私には…」

私はピンクゴールドの指輪をはめている左手を、右手でぎゅっと握りしめる。

「彼氏がいるって?」

私は左手を握りしめたまま、首を縦に振った。

「…でも、もう亡くなって一年以上経ったんだろ?」

彼のほうを見れず、私は下を向いたまま何も言えなくなる。

亘さんは実は、朝日に会ったことがある。
朝日の生前、確か私が入社して1年目の頃に二人で歩いているところを目撃された。

『おお、藤堂』

ショッピング街を歩いているとき、私たちの反対側から亘さんが歩いてきて、そう声をかけてきた。
私は話したくなかったけれど、上司なので無視するわけにはいかず、私はひきつった笑顔で挨拶したのを覚えている。

『あら、亘さんこんにちは。お買い物ですか?』

『まあな。隣は、彼氏さん?』

私の右隣にいた朝日を見て、彼は即座にそのことに触れてきた。
何でもはっきり言ったり聞いたりするのは仕事ではいいけれど、プライベートではやめてほしいな。
彼のはっきりしたところが、私はあまり好きではなかった。

『こんにちは。河田朝日と申します。ひかりがいつもお世話になっています』

そう言って朝日は丁寧に頭を下げていたっけ。