「藤堂さんと何かあったの?」

俺はどきりとする。

「何かって?」

「最近急に仲良くなったよな」

確かに最近は距離が近づいたと感じる。
まわりからもそんな風にみえるのだろうか。

「藤堂さんはダメだぞ。彼氏がいるんだから」

飯沼を含めみんなは知らない。
藤堂さんの彼氏はもうこの世にいないことを。

「わかってるよ」

このままもっと、彼女との距離を縮めることができるだろうか。
そうすればいつか、俺とのことを考えてくれないだろうか。

我にかえり、俺は先走る妄想を振り払う。
何を言ってるんだ俺は。

このまま藤堂さんと親密になっていくものだと思っていた。
俺はこのとき自惚れていた。
俺は彼女の過去を軽く考えすぎていたんだ。