「部下の俺が言うのは偉そうかもしれませんが、もっと頼ってください。俺、藤堂さんに頼られたいです。そうしたら全力でサポートしますから」

俺が彼女をしばらく抱き締めたまま、時間が流れた。
どれくらい経っただろう。
彼女の手が俺の身体に触れ、俺はピクッと反応する。
彼女が俺の腰のあたりに手を回し、ぎゅっと力を入れるのを感じた。

「…ありがとう」

そう言って彼女はまた目から涙をこぼす。
気づけば俺のYシャツは彼女の涙でぐっしょりと濡れていた。

「あ…ごめんなさい」

彼女はそのことに気づき俺から離れようとする。
しかし俺は彼女の腕を引っ張り、再び俺の胸へと引き寄せる。

「泣きたいときは気の済むまで泣いてください。俺、藤堂さんが泣き止むまでそばにいますから」

いつもの彼女なら"でも…"と言って遠慮をするだろうが、今の彼女は俺の言葉をすんなりと受け入れた。

「…じゃあ、もう少しだけこのままで居させて」

「はい…」

俺と彼女は長い間抱き締めあっていた。
その間俺は他のことは一切考えず、彼女のことだけを考え、見つめていた。

入社した頃から憧れていた彼女が、今俺の腕の中にいる。
ずっとこのまま、彼女のそばにいられたら良いのに。

愛しい。
彼女の弱い部分を垣間見て、余計にそう思う。

彼女が好きだ。
俺では、亡くなった彼の代わりにはならないだろうか。

彼女を抱き締めながらそんなことを考える。
でも今はこうしてそばにいられるだけで良い。
時間よ止まれ。

叶いもしない永遠を願って、俺は目をつむった。