birthday song

『そしたら、いきなり走って帰るし……気づいたら俺、彼氏に詰め寄ってた』

『え、声かけたの！？』

『あぁ…声っつーか、怒鳴り声？』

『え、怒ったの…？』

『だってお前、泣いてただろ』

『……っ』


なんで、気づいたの？


『でもお前、いい奴彼氏にしてたんだな』

『…？』

『あの人、俺に、万智のとこに行ってやってくれって言ったんだ』

『……』


まさか、彼は気づいていたの…？

私より先に…？


『俺は確かにあの子の彼氏だけど、好きな人にはなれなかったみたいだって。
……なぁ、万智、他に好きな人がいるのに、なんであの人と付き合ったんだ？』

『……っ』

『言えないこと、か？』


どうしよう。

これはきっと、告白になってしまう。

でも、言わなきゃ、言わなきゃ。

気持ちに反して、声にならない。

こわい。

もし、フラレたら？

私たちは、もっと離れてしまう？

もし充に突き放されたら。

私はきっと、生きていけない。


『言えないなら…』

『すき……っ』


やっとのことで絞り出した声は、情けなくボロボロとこぼれ落ちた。


『え……』

『充が……好き』


充の目が、限界まで見開かれている。

必死に目を逸らすまいとした。

あなたに届くまで、何度でも言おう。


『すき、充が好きだから……あの人のこと、ちゃんと好きになれなかった』

『じ、じゃあ…なんで俺のこと、避けて……』

『……寂しかったから。
あの約束…忘れちゃったんだなって。
もう、傍にいてくれないんだなって…っ』


誰にも言っていない、胸のうちに秘めていた思いが、涙と一緒に溢れた。

その瞬間、身体に衝撃が走った。

それと同時に、欲しかった温もりがやってきた。

痛いくらいに抱きしめられる。


『忘れるわけないだろ…！？
ずっと一緒にいるために、俺はアイドルになったんだから』

『……えっ？』


一拍置いて、充の胸に埋め込んでいた顔を上げた。


『くっそ、やっぱ順番間違えたか！？』

『なんで、え、約束のため？？？』

『そうだよ、だって、守るって決めたからには養わないと』

『……え、養うって、え？？』

『ごめん、万智、俺やっぱ順番間違えた。

………好きだよ。ずっとずっと。約束したときから、一生一緒にいたいって思ってた』