半ば当てつけのように、彼氏を作った。

彼氏募集中でーすなんて、かなりテキトーなことをクラスで口走ったら、毎日放課後に呼び出されるようになった。

その中の、ちょっといいなと思った男子と付き合った。

最初は楽しかった。

充以外の男子と触れ合うなんて初めてで、新鮮で。

でも、デートの時、私が泣いたら。

彼はめんどくさそうな顔をした。

それに酷く、傷ついた自分がいた。

充なら…いつもと同じように元気づけてくれるのに。


『ごめん、別れる、今までありがとう…!』

『おい、万智!』


その場で別れを告げて、走った。

家に帰り着くと、ただいまも言わずに自室に篭った。

涙が止まらない。

感情がぐちゃぐちゃだった。

犯した過ちと、辿り着いた答えと。

悪いのは自分。

だって、私は彼に、これっぽっちの恋愛感情も抱いていなかったのだから。

心に開いた穴を埋めるための、"彼氏"だったのだから。



私が好きなのは、最初から充だけだった。



どうしてこんな簡単なことに気がつくのに、こんな遠回りをしたのか。

関係のない誰かを巻き込んで。

それでも涙は一向に止まらない。

私の涙を止められるのは彼だけだから。

本当に馬鹿だ、私。

充がいなきゃ、泣き止み方も分からない。




『みつる…っ!!』

『どうした?』

『……え?』


今、声がした…?


ゆっくり顔を上げるとそこには、窓枠から降りる充。


『お前ちゃんと鍵閉めろよ……』

『…なんで……っ』

『なんでって、そりゃ不用心』

『そうじゃない…っ、なんでいきなり…』


目線を彷徨わせると、首の後ろをポリポリ掻いた。

そして、一息つくと。


『いきなりじゃない。今日ずっと一緒だった』

『……は?』

『おばさんに聞いたら、今日デートだって言うから、いそうなとこ探してみたら、見つかって…』

『…もしかして、つけたの?』

『まぁ……そういうことになるな?』


充は全然私の方を見ない。

逆光で見えづらいけど、ちょっと、赤い…?