その理由がトラだったとしても、あたしは幸せだった。


昼寝をしているトラ。


ご飯を食べているトラ。


猫じゃらしに飛びつくトラ。


いろんなトラの写真を見せた。


けれど、写真はどんどん少なくなっていく。


見せる写真の枚数が少なくなるにつれて、あたしの気持ちは焦りはじめていた。


トラの写真がなくなれば、駿の興味は失われてしまう。


そうすればもう一緒に帰る事なんてできなくなってしまうだろう。


「それでね、この前トラがね――」


「あ、ごめん。俺の家、こっちなんだ」


T字路に差し掛かり、駿がそう言った。


「あ、そうなんだ……」


いつの間にこんな所まで来ていたんだろう?


駿がこの曲がり角を曲がって帰っていることは、あたしもしっていた。


「トラの元気そうな写真が見れてよかった。ありがとう」


そう言い、体を回転させてあたしに背中を向ける駿。


待って。


もう少し話がしたいの。


トラの話じゃなくてさ、お互いの話がしたいの。