当然、水野君のこと考えてた、なんて言えるはずない。
「別にー。」と短い返事をし視線を下に向けた。
今度は私が見られているのか、右側に感じる視線。
確かに集中しづらいな、これ。
「水野君、恥ずかしいからやめて。」
そう言って、少しムッとしてみせる。
「えー、宮川の真似しただけなんだけどなぁ」
「...早く問題とかないと8時になるよ?」
8時からは部活の朝練に参加しているらしく、この時間はたったの30分だけ。
たったの30分だけど、この1ヶ月で水野君という人がだいぶわかった。
クールそうに見えるけどお喋りで少し意地悪。集中力はあんまりなくて、勉強も苦手だけど努力家。
そして...
「やばっ。あ、この問題も教えて。」
とってもおねだり上手。
そんな笑顔でお願いされたら、「しょうがないなぁ」っていくらでも教えてあげてしまう。