私の隣でシャーペンを動かす水野君が、陸上で全国大会に行ったというのはこの学校のほぼ全員が知っている。
全国大会に行ったどころか、確か今年は五位だか六位だかに入賞していた。
スポーツにはあまり詳しくない私でも、全国大会で入賞というのがどれほどの事かは分かる。
きっとスポーツ推薦で、ある程度高校も選べるだろうに。
こうして彼は、朝早く起きてまで得意ではないのであろう勉強をしている。
きっと何か事情があるのだろう。
そんなことを考えながら、思わずぼーっとしていると水野君とバチッと目があった。
「宮川、そんなにみられると集中できないんだけど。」
照れたような顔をして、目を逸らす水野君に
「ごめん」
と、私も目を逸らす。
そこで話は終了で、また問題に取り掛かるのかと思ったら、水野君が意地悪な笑みを浮かべた。
「何考えてたの?」
私の奥のところに入ってくるような質問。
きっと私が水野君の事考えてたと分かっているのだろう。
彼は、妙なところで勘が鋭いことをこの一ヵ月ほどで知った。