「真菜は本当に清水先輩が嫌いだよね」

「どこがいいのかさっぱり何だけど」

清水 虹輝先輩
学校で1番かもしれないと言われているかっこいい先輩だ。
でも私は嫌い。
人気者をあんまり好まない。
嫉妬とかそんなのでは決して違うんだけどね…

本当に嫌いなんだ。

「私は好きだけどなー清水先輩」

「顔だけだよきっと…」

顔だけ。
ちやほやされてる人の性格は大体が良くない。

「私、先輩に挨拶してくるね!」

「うん、いってらっしゃい」

紗奈は先輩に恋している。
私は紗奈の事が友人として大好きだから紗奈の恋は応援したい。
でも…

「ちょっと抵抗あるな…」

私みたいなことになってほくないから…

そんなことを思いながら私は1人で下駄箱へ向かった。

**
うるさい教室。
何でこんなに人が集まるんだか…

ガタンッ

「あ、ごめんねー当たっちゃった」

クラスの女子が私の机を蹴った。
私は別に苛められてる訳ではないがこの女の気分が悪い時は何かしらちょっかいを出される。
でもこの女も…………

「あ!先輩だわ!」

先輩が好きなのだ。
気が付くと廊下には先輩がいた。
そして廊下は一斉に女の溜まり場になった。

私は自分の机を整えながら眺める。
あの輪の中に入りたくない…
人酔いするな、きっと…

「ねぇねぇ今日の放課後カラオケ行かない?」

「ごめんな、今日はちょっと家の方の先約が入ってて」

「えー、残念!でも家思いの先輩だね」

「ありがとう」

廊下でそんな声が聞こえた。
家思い…ね

キーンコーンカーンコーン

チャイムが鳴って一斉に皆が座り出す。
そして、しばらくして
担任がやってきた。

1日の始まりだ。

**

「ー・・・がー・・で」

国語の時間。
物凄く眠くなる…
でも今日は変だ…汗が止まらない
ちょっとフラフラする…

私は手を挙げて

「すみません…少ししんどいので保健室行ってもいいですか?」

そう言った。

「佐々木か、珍しいな大丈夫か?保健室行ってこい」

「すみません、ありがとうございます」

私の成績のお陰で先生からは悪く思われてない。

うーん保健室遠いな…

やっとの思いで保健室に着いた時には
ベッドの上で倒れていた。

**

「あれ……もしかして寝てた…」

寝てたのか…でも…
布団が被らされていた。
だから暑いのか…

「あら起きたのね佐々木さん」

「あ、先生…」

カーテンが開いたかと思うと保健室の先生がいた。

「佐々木さん、貴方熱中症気味で倒れていたのよ。よく保健室まで来れたわね」

「すみません…後、今何時ですか?」

「えーと…今は1時ね」

「え、えぇー!?」

確か国語は2時間目…
昼休憩も終わっちゃってる…

「ちゃんと寝ときなさいよ」

「はい…」

あぁ…内申が…

「あ、後私今から会議があるの。1人で大丈夫かしら?」

「はい、大丈夫です」

「もし誰かが来たら私は会議中って事を言っといてくれないかしら」

「はい、わかりました」

「ありがとう佐々木さん」

ガラガラ

シン…………

静かだなー・・

私は布団に潜った。
でも暑い。
タオルケット無いのかな…

仕方なく私は布団無しで寝転んだ。

しばらくしてからドアが開く音がした。

ガラガラ

「失礼しまーす」

男子の声だ…
でも聞き覚えがある。

…………
先輩…?

「あれー先生いないのか」

そうだ、清水先輩だ…
授業は抜けてきたの?

シャーと隣のカーテンが開く音がした。
そしてベッドが軋む音もした。
すると携帯の着信音がした。
私は耳を澄ませて声を聞いた。

盗み聞きが趣味ではないけど…

「どうした?母さん」

お母さん?
こんな平日の授業中に電話だなんて…

「大丈夫か?警察呼んだか?」

警察!?どいうこと…?
もしかして部屋に泥棒とか入ったりして…

「あぁ俺もすぐに行けるように先生に言うよ…母さんはとにかく父さんをそれ以上怒らせない方がいい」

父さん……?
もしかして…………
先輩とお母さん暴力受けてるんじゃ…

「俺?俺の調子は大丈夫だよ。怪我だって治ってるし」

やっぱり…
以外と先輩も大変なんだな…

「じゃあ夕方には絶対帰るよ。うん。気をつけてな」

電話を切ったようだ。
そしてカーテンの開く音がした。
3回。
…………………ん?

3回?
開けて閉めて2回…
じゃあ…

恐る恐る上を向くと…

「せ、先輩……」

「何聞いてるの?君」

清水先輩が立っていた。