「部長もこの作家好きなんですね。こんなに集めて、高校の時付き合っていた彼女みたいです」
「あら、亜咲君高校の時彼女いたの。まあ、貴方だったら不思議じゃないけどね」
少し照れながら「そんなぁ」と呟いた。
「彼女の部屋にもいっぱいありましたよ。榊枝都菜さんの本。僕も好きでした。彼女も崇拝するほど好きでした」
次第に声のトーンが下がる。少しづつ美野里を思い出す様に。
僕の表情から「その彼女本当に好きだったのね」
「……でも別れました。そして彼女北海道に行きました。今北海道の大学にいるはずです」
「そっかぁ。でもねこの榊枝都菜も北海道にいるのよ。そこで執筆活動をしている」
「部長、もしかして知り合いなんですか」
「そうねぇ、知り合い。小さい頃からの。私が本当に小さい頃かの……」
次第に俯き彼女は目をあつくしていた。薄っすらと溜まる涙。
「私の実母」
榊枝都菜は部長、有田優子の実の母親だった。彼女の両親は、彼女が幼い頃離婚した。父親の方に引き取られた彼女は有田の姓のまま、そして母親の方は元の姓「榊」になったと。
部長は物心ついたときから、いつもそばに居てくれた母親が小説を書いているのを見ていた。そしてよく自分だけにお話を書いてくれたことも。
「そのお話をそっと優しく読んでくれるの。私が寝るまで……」
両親が別れる時。不安定な収入と、きっと彼女に自分の娘に不憫な想いをさせてしまう。母親は身を裂く思いで彼女を父親に残した。
彼女は母親を失い、毎日悲しみの中にいた。そんな時母親から来た一通の手紙が彼女を大きく変えた。
その手紙の中に書かれていた言葉は、優しい言葉なんか一つもなく、今の悲しんでいる彼女を罵倒するような内容だった。でも、それは自分が一番心から愛している娘へのエールでもあった。
いつまで泣いているの。そんな子はもう私は知らない、泣きたければいつまでも泣きなさい。
そして泣きながら大人になりなさい。
誰もあなたを助けてはくれません。優しい声はかけてくれるけど、あなたを救ってくれる人なんか誰もいません。そんな泣いてばかりいる子には。
悔しかったら泣くのを止めなさい。
そして、あなた自身の力で前を歩きなさい。泣いていたころを振り返らないで。誰よりも前を歩きなさい。
「あら、亜咲君高校の時彼女いたの。まあ、貴方だったら不思議じゃないけどね」
少し照れながら「そんなぁ」と呟いた。
「彼女の部屋にもいっぱいありましたよ。榊枝都菜さんの本。僕も好きでした。彼女も崇拝するほど好きでした」
次第に声のトーンが下がる。少しづつ美野里を思い出す様に。
僕の表情から「その彼女本当に好きだったのね」
「……でも別れました。そして彼女北海道に行きました。今北海道の大学にいるはずです」
「そっかぁ。でもねこの榊枝都菜も北海道にいるのよ。そこで執筆活動をしている」
「部長、もしかして知り合いなんですか」
「そうねぇ、知り合い。小さい頃からの。私が本当に小さい頃かの……」
次第に俯き彼女は目をあつくしていた。薄っすらと溜まる涙。
「私の実母」
榊枝都菜は部長、有田優子の実の母親だった。彼女の両親は、彼女が幼い頃離婚した。父親の方に引き取られた彼女は有田の姓のまま、そして母親の方は元の姓「榊」になったと。
部長は物心ついたときから、いつもそばに居てくれた母親が小説を書いているのを見ていた。そしてよく自分だけにお話を書いてくれたことも。
「そのお話をそっと優しく読んでくれるの。私が寝るまで……」
両親が別れる時。不安定な収入と、きっと彼女に自分の娘に不憫な想いをさせてしまう。母親は身を裂く思いで彼女を父親に残した。
彼女は母親を失い、毎日悲しみの中にいた。そんな時母親から来た一通の手紙が彼女を大きく変えた。
その手紙の中に書かれていた言葉は、優しい言葉なんか一つもなく、今の悲しんでいる彼女を罵倒するような内容だった。でも、それは自分が一番心から愛している娘へのエールでもあった。
いつまで泣いているの。そんな子はもう私は知らない、泣きたければいつまでも泣きなさい。
そして泣きながら大人になりなさい。
誰もあなたを助けてはくれません。優しい声はかけてくれるけど、あなたを救ってくれる人なんか誰もいません。そんな泣いてばかりいる子には。
悔しかったら泣くのを止めなさい。
そして、あなた自身の力で前を歩きなさい。泣いていたころを振り返らないで。誰よりも前を歩きなさい。