居間と一緒になったダイニング。その大きな窓からはすぐ近くにある小高い山が望めた。緑豊かな山、そして数多くの木々。その光景は少し懐かしさをも感じさせる景色だった。

 することが無くなった僕は、シンクに放置していた食器を洗い、使ったタオルと、ふと彼女が汗だくになって着替えた下着、と思いついでに洗濯はしてあるかもしれない、まとめて置いた下着も一緒に洗濯をした。沙織の下着も自分では洗ったことがないのにと思いながら。

 日が陰り、映し出される小高い山と木々が夕日に照らしだされてきた頃。彼女の様子を見に行った。ようやく座薬が効いてきたんだろう。あの苦しそうな息使いはなく、穏やかでスースーと寝息を立てるように眠っていた。
 僕もほっと肩を落とした。

 掃除と洗濯が一通り終わった頃にはすでに外は暗かった。

 もし彼女が起きてきた時、何か食べさせる為に御粥を煮てやった。

 僕は冷凍庫にあった冷凍ピザに買い置きしてあったのだろう、カップラーメンを見つけそれを夕飯にあてた。
 そして、居間のソファで落ちるように眠りについた。

 朝、カーテンの隙間から刺す日差しで目が覚めた。気が付くと僕には薄い毛布が掛けられていた。

 キッチンに行くと昨日作った御粥がきれいになくなっていた。

 彼女の寝室に行きそっと彼女の額に手をやるとあの熱さは感じられず、ひんやりとした額が僕の手から伝わった。そして気が付いたように優しくそして恥ずかしそうに「おはよう」と潤んだ目で僕を見つめながら言った。

 「もう大丈夫だ」

 彼女はそう言った僕を見て

 「ありがとう」と一言言った。

 そこにいるのは、いつも文芸部で見るあの凛とした部長の姿ではなく一人の純真な女の人がいた。

 昼過ぎ、彼女は起き上がり居間にいる僕のとこに来た

 「大丈夫」「うん」「良かった」

 「本当にありがとう」彼女は俯きながら言う。


 「ああ、でも大変だった」そして「見たせしょ、触ったでしょ」


 そして「初めてなんだからおし……」手で顔を覆い真っ赤になっていた。

 「また熱でた」

 「馬鹿」でも熱は平熱だった。


 僕は彼女が落ち着いたのを確認して、そのままバイトに行った。

 バイトが終わったその夜、そして昨日の夜も沙織からのメッセージは来ていなかった。