沙織からメッセージが来た

 「***今村沙織  お疲れ達哉。今日ようやく終わったよ。

 いやー我ながら、高校生って若い。いいなぁあの若さは。

 今の子達

 ……そう表現するところがもうおばさんなのね。…… 

 話題についていけなく今日は苦笑いするばかりだったよ。

 お昼休みにね、いろいろ話したの。短い時間だったけど、色んな話が出来た。そしてあの子たちもいろんな悩みを持っていることも知った。

 私もその時いろんな事悩んでいたこと思い出しちゃった。

 嫌なこと楽しい事。でも強く残っているのは苦しかったこと。

 嫌なことに入ると想う。でも、またこの学校で懐かしい風景を見ながら、苦しかったこともなつかしいなぁって感じる。不思議だよね。

 明日から、お休みです。明日行くね。今日はごめん、真っ直ぐ帰る。明日。

 それじゃ、お休み達哉。

 ***

 沙織は教育実習が始まってから帰りに、毎日とは行かなかったが僕に顔を見せによってくれた。会わない日は僕がバイトに行っている日。

 始めは沙織もなんだか「ちょっと寂しいね」と今までと違って自由が効かなくなることに寂しさを感じていた。
 「大丈夫だよ、2週間じゃないか。すぐだよ」

 そう言って元気づけたが、大学を卒業して社会人となれば、これが当たり前の生活になる。それが遠いことじゃないことは二人共それとなく感じていた。

 次の日、沙織は朝早くから僕のところにやってきた。そして僕の顔をマジマジと見つめ抱き合いながら耳元で「少し痩せた?」と訊いてきた。「うん、毎日沙織と会えなかったから」と言ってキスをした。

 その日は、昼まで部屋のカーテンを開けることはなかった。

 今日と明日バイトは休みにしておいた。もちろん大学は休校日だ。

 「なぁ沙織、今日これから何する」

 「如何しよっかな。でもこうしているのもいいかも……」

 そして沙織は机に飾ってある写真立てを手にして。

 「ついこの間だったんだよね、これ」

 「そうだな、ついこの間だった」

 それは、あのヘルプに行った新店で撮った写真。慰労会で二人で制服姿でキスをしている姿を恵梨佳さんが写してくれた写真。 

 「なんだか懐かしいね」沙織がふと言う言葉に僕も懐かしさが込みあげてくる。