朝起きると僕一人がベットにいた。
「いってきます」と枕元に沙織のメモが置かれてあった。
1時に店に入ると、沙織もナッキもすでに仕事をしていた。中番シフトだから僕よりも早く仕事に入る。
そして沙織はトレーを片手にサービスまでこなしていた。
すれ違い狭間、沙織に「大丈夫」と訊くとにこやかに「大丈夫よ」と答えた。その後ろで恵梨佳さんが
「さすがね沙織さん。もうサービスまで熟(こな)している。スカウトしちゃおうかな」と言ったから僕は
「え、うそ」と漏らしてしまった。それを聞いて
「やっぱだめかも。彼氏の方が心配し過ぎて仕事できなくなりそうだから」とふふふと笑いながら
「それじゃ今日私オフなの。後よろしくね」と軽く流したが、実は僕が来る前支配人とひと悶着したらしい。
「恵梨佳君、今日はオフじゃなかったですか」支配人から呼び止められ「ええ、そうですけど少しでもやることやろうと思って」
支配人は恵梨佳さんに怪訝そうに「それではいけません」
「どうしてですか」
「恵梨佳さん。貴方にがんばって戴くのは本当に助かります。でもあなたが休みを度外視してまで仕事をする義務はありません。
それにあなたが休みの日まで仕事をすれば他の人も取ずらくなります。あなた一人の事ではないんですよ休日は」
支配人からそう言われ、恵梨佳さんは下を俯いてしまった。
そして
「僕は、君の体が心配なんだ。もし君に何かあったら僕は自分を責めなければいけなくなる。あの時こうすればよかったと。だから僕の言うことも訊いてほしい」
恵梨佳さんは俯いたまま「はい」と答え、顔をゆっくりと上げて彼のその顔を見つめながら「ありがとう」と答えた。
今日もたくさんの客がこの店を利用している。テラスにいる客のほとんどがビーチから水着のまま来ている。それもこの店のコンセプトだ。
アイドルタイム時、テラスに座る水着の女性に僕は釘付けになった。いやそれは僕だけはない様だ。ここにいる男と名乗る者たちが彼女に視線を投げかけていた。
黒いビキニに白のパーカーをはおりサンダル履きでサングラスをかけ、その先にいる僕を見つめていた。その女性は恵梨佳さんだった。
僕が恵梨佳さんに気が付くと、手を振って僕を呼んだ。
「どうしたの、顔が赤いわよ」意地悪に