みんな賛成と声をそろえた。

 ホテルに着くとそのまま宮村の部屋へ直行した。

 乾杯、冷えたビールが喉を刺すようにして流れ込む。 

 「ふう、美味い」なんだか昨日からの疲れが抜けていくような気がした。

 今日は愛奈ちゃんも珍しく飲んでいる。ビールじゃなくジュースをちびちび飲んでいるナッキが

 「みんないいよなぁ。私なんかお酒弱いからそんなに飲めないし」といじけモードが入っていた。

 「あ、それ愛奈ちゃんも一緒だよ。愛奈ちゃんお酒強くないから、それにお薬飲んでいるからいっぱい飲んじゃいけないんだって。だから少し、ちびちび飲むんだよ」

 「なぁんだ、愛奈ちゃんも私と同じかぁ。仲間だね」

 「そ、仲間」二人肩を組んで笑いあった。

 「それはそうと愛奈、薬飲む時間だろ」そう言ってカップにミネラルウォーターを注いで愛奈ちゃんの前に置いた。

 鞄から薬を取り出し「あむっ」と薬を飲み込んだ。

 「大変だね」ナッキが愛奈ちゃんに言うと。

 「うん、でもね。私これ飲まないとおかしくなっちゃうんだ」

 「愛奈」

 宮村がすかさず言う


 「ううん、いいの。私ね高校3年の時精神病院に入院していたの。そのちょっと前におかしくなっちゃんだね。私は覚えていないんだけど、多分高ちゃんにはいっぱい迷惑かけたと思うよ。今、こんな話し方だけど……その前はなんていうか、高ちゃんの事……孝之って呼んでた」


 その呼び方に宮村ははっとした。あの時の、あの時の愛奈、俺を呼ぶあの愛奈の声を思い浮かべていた。
 「でもね、もうあの時の様にはどうしても呼べないの。

お薬のせいだって解っているけど、お薬止めるともっと高ちゃんを苦しめるから。もとに戻りたい、でももう戻れない。もしかしたら神様がもうあの時のように戻るんじゃないって言っているんだよ。きっと」


 「愛奈」


 宮村は愛奈ちゃんを抱き抱えた。宮村の目にうっすらと涙が浮かぶ。沙織もこの事を知っている、そしてそれを自分の何かに指し示すように目に涙を浮かべていた。僕にはそのなにかは解らない。


 「ぐしゅ」ナッキはもう涙を堪え切れず泣いていた。彼女もまた沙織への想いを断ち切れていない様に。