僕らが行ったお店は、駅からすこし離れた所にあった。そこは昔ながらの大衆食堂という趣で、一緒に民宿も経営しているところだった。

 僕らは、お勧めのお刺身定食を人数分頼もうとしたが宮村が


 「ええい、めんどくぇ。おばちゃん海鮮船盛一丁」と真顔で頼んだ。


 出てきた船盛は流石海の街にある食堂。その盛は想像を絶していた。

 「おお、すっげぇ。山盛りじゃん」

 「この船盛底上げじゃないよ。下までお刺身でびっしりだよ」

 「すっごーい、ほんとだぁ。食べきれるかなぁ」


 「ええと、イカさん、タコさん、えびさん、あの赤いのはマグロさん。んん、愛奈ちゃんいっぱいありすぎてわかんない」


 「愛奈ちゃん数えていたの」僕が訊くと

 「うん。だっていっぱいあるんだもん」

 「愛奈、いっぱい食えぇ」「うん高ちゃんに負けないもん」

 一番先に箸を付けたのは愛奈ちゃんだった。

 「みんな急げぇ。大食いの愛奈に全部食われちまうぞ」

 みんな一斉に箸を付けた。

 「うっま。幸せー」とナッキがしみじみと言った。

 サービスでご飯と味噌汁が出た。僕と宮村のご飯は丼ご飯。女性陣は程よい大きさの小鉢のような器に可愛らしく盛られていた。

 その味噌汁を軽く啜ると、そのうまさに僕は感動した。

 しっかりと効いた魚介の出汁に、つんと来る葱の風味。豆腐と具材はシンプルだったが、その甘く香る味噌の風味が絶品だった。

 やっぱりインスタントじゃこんな味は出せないな。今度ちゃんと作ってみようと思った。

 僕らはお店に悪いくらいワーワーと騒いで、あっと言う間に平らげてしまった。

 みんなで割り勘にして計算したら想いの他安く上がった。

 会計の時騒がしくて済みません。と一言添えると

 「なぁに、若い奴は近位でちょうどいい。それにあんなに美味しく食べてもらうと作り甲斐があるってもんよ」
 漁師町独特の人情を感じた。

 「あーお腹いっぱい」

 「美味しかったね」

 「あー美味かった」

 「愛奈ちゃん一番食べたもん」

 「そうだね」お店を出てから歩きながら5人が一言づつ出した言葉。

 途中、コンビニによってビールとジュース。それにおつまみを買い揃え

 「帰ったら俺の部屋でいっぱいやろうぜ」

 と宮村が、親指を立てぐいぐいとさせながら言う。