沙織は「うん」といいながら頷いた。

 「とりあえずシャワー浴びよっか」沙織はクスッと笑って「そうね」と返した。

 「どうする沙織先に入る。あんまり時間ないからさっとしか浴びれないけど」

 沙織はちょっと考えて僕の耳にそっと

 「一緒にはいっちゃおうか」と照れながら言った。


 「いいの」「時間ないんでしょ」「仕方がないな」「だって時間ないんだもん」もう既に二人共シャワー室にいた。お互いに何も身に遮る物がない体で。


 二人で部屋を出ようとした時、向かいの部屋のドアが開いた。

 宮村と愛奈ちゃん。僕と沙織二組のカップルが鉢合わせた。

 宮村はフンとしていたが愛奈ちゃんは「あー沙ちゃんと亜咲さんだぁ」と小さく手を振ってきた。

 そして宮村は

 「ほんとお前ら急速過ぎんだよ。俺らみたいにゆっくり、なんだ時間ていうのをだな……」

 愛奈ちゃんが宮村の言葉を遮った。

 「高ちゃん。人はね好きになると時間なんか関係ないんだよ。二人はね、そ……そ……そうし……そ……」
 宮村が代わりに言う「相思相愛」

 「あはぁ、その相思相愛っていうやつだよ」

 「まいったなぁ。愛奈ちゃん」

 「えへっ」と言ってこぶしをコンと自分の頭に向けた。

 「でも随分沙織とも仲良くなったんだね」

 「来る途中、車の中でいろんな事話たしね」沙織が言った。

 「ナッキとも仲良しになったんだよ。面白いよねナッキって」

 「そうね」

 そんな会話を宮村は微笑ましく訊いていた。

  ガチャ、ナッキの部屋のドアが開いた。ふと僕らを見て

 「あれぇ、なんだみんな待ってたの。早く出たつもりなのになぁ」ちょっとがっかりした様に言った。

 「ねぇ、ねぇ。愛奈ちゃんお腹すいちゃった。早く行こうよ」

 愛奈ちゃんが宮村に目で訴えるようにせかす。

 「解った解った。それじゃ行こうかみんな」

 そう言って愛奈ちゃんの手を取り僕らの前を進んだ。

 そんな姿を見ながら沙織は薄っすらと涙を溜めていた。

 「どうしたの」

 彼女は軽く涙を手で拭いながら

 「なんでもない」と僕を見て微笑んだ。

 その後ろに呆れた様にぼくら四人を眺めながら後をついてくるナッキがいた。