ホテルに帰ると入り口で宮村と愛奈ちゃんが沙織とナッキの荷物を持って待っていた。

 「おっせーぞ亜咲」

 「遅いって俺らは今まで仕事だよ」

 「まーまー、高ちゃんも亜咲さんも落ち着いて落ち着いて」

 愛奈ちゃんが今日は珍しく僕らの中に入ってきた。愛奈ちゃんは宮村の事を高ちゃんと呼んでいる。当の本人は恥ずかしいようだが。

 「あ、そうそうお夕食まだでしょ。さっき高ちゃんといいお店見つけて来たんだぁ。ねぇ高ちゃん」

 「おお、さっき散歩していたら偶然な」やっぱ宮村は愛奈ちゃんには頭は上がらない。

 「え、そうなんだ行ってみようよ。私お腹ペコペコでさぁ」

 ナッキは本当に腹が減ってそうだ。僕は沙織の方を見て

 「ええ、そうね。達哉も行くでしょ」

 「もちろん」と答えた。

 「それじゃ俺らチェックインして、まずはシャワーを浴びて来るわ。もう海水でベタベタだからな」

 僕は時計を見て

 「そうだな、じゃあ7時にロビーで」

 宮村と愛奈ちゃんはさっそくフロントに行ってチェックインを済ませた。予約は恵梨佳さんが会社を通してやってくれていた。

 「美津那那月様と今村沙織様ですね。本社の方からご予約を頂いておりますね。それではこちらにサインを」

 二人はカードキーを受け取り、荷物を持って僕とエレベータで上へあがった。

 僕らみんな同じ階にまとめてくれたらしい。それぞれ各々の部屋を確認して「あれま、亜咲君から私たち続いて隣同士なんだ」そして宮村たちは向かいの二人とも隣同士の部屋だった。

 「そうみたいだね。まずはシャワー浴びようよ」

 「はーい、それじゃぁねぇ」とナッキは早々と部屋に入った。

 沙織は僕の方をじっと見ていたから「入る?」と訊いた。「うん」と頷いた。頭をクシャッとしてやって一緒に部屋に入った。

 扉を閉めるなり、我慢の限界の様に抱き合った。そして唇を重ね合わせた。たったひと晩会わなかっただけなのに。ひと晩会わない事なんていつものことなのに。

ようやく出会えた恋人の様に長く熱く慈しみながらお互いの唇を重ね合わせた。

 そして、ゆっくりと離れ、沙織の頭が僕の胸に着いた。

 「なんだかとても久しぶりに遭ったような気がする。お店でもずっと一緒だったのにね」
 僕は黙って沙織を手で包み込んだ。

 「よく来たね。ありがとう」