「そういえば、最近ナッキの姿見えないな」

 「ああ、ナッキ。彼女9月に個人戦控えてるから、だから練習に励んでる」

 アーチェリー部のと訊くと「そ」と沙織さんは答えた。

 スマホの着信音が鳴った。見るとお袋からだった。

 準備の都合があるから今年の盆は帰るのかとの問い合わせだった。

 「ああ、お盆。まだ解んないよ、それに俺明日からバイト先で別の店にヘルプなんだ3日間だけど。うん、また近くになったら連絡するよ。ねぇ、後ろで泣いてるの咲良(さくら)ちゃん、元気だねぇ」

 姉貴は去年、5年付き合った人とようやく結婚した。そして生まれたのが姪の咲良だ。8月で5か月になる。

 「あなたもこっちに返ってくると辛いのは分かるけど、たまには帰ってきなさい。解った」

 お袋はまだ美野里の事を引きずっていると思っている。

 「解ったよ。それじゃ兄さんにも宜しく言っといて」

 そう言って電話を切った。

 「お母さんから」と沙織さんは遠慮がちに聞いた。

 「うん、盆に帰ってくるかって」

 「どうするの」

 「その時にならないと解んないよ。どうせ家じゃ僕より姪の咲良ちゃんがメインなんだろうけどね」

 「そっかぁ」沙織さんは漏らすように言った。

 そして少し下を俯いて


 「あのね、達哉さん。私たちの事お母さんにばれちゃった」


 「えっ」

 別に悪いことをしている訳でもないのにドキッとした。

 「そ、それで」

 心配そうに訊くと沙織さんは笑って

 「大丈夫よ、怒られたり別れろなんて言わないから、家のお母さん。意外とオープンなのよ」

 「オープンだからって……」

 笑ってはいるが何か言われたことは確かなことだ。

 「最近ね、お母さんから何だかいつもうれしそうねって言われて、いきなり彼氏でも出来た?なんて訊くから思わず顔色変わっちゃったの。そうしたらお母さん、そうら図星ってまんまとはまっちゃった」

 「それでお母さんなんて」

 「よかっったねって」ホット肩を撫でおろした。 

 「それでね、それからが大変なの。弟の性格って多分お母さんの性格だったのね。くれぐれも今はちゃんと避妊してねだって。もう二十歳にもなる大人なんだけど、今はまだ学生なんだからって。

そしてね自分も、もう少し若ければいい男見つけに行くんだけどなぁだって、呆れちゃった」