コピー紙は、その風にすくわれる様に宙に舞った。

 辺り一面に散らばったコピー紙を見て

 「あー何だよ」すぐに拾いに走る。

 一枚一枚、あちらこちらに散らばった紙を拾い上げる。

 砂をほろいながら、一枚一枚手に取った。

 ふと、一枚を拾おうとした時、細い指の手と触れ合った。

 見上げると、髪の長い小柄な女性が立っていた。

 「あ、すみません」

 小さな声で一言、触れた手を引っ込め彼女は声を漏らした。

 よく見ると彼女は数枚の用紙を、胸に抱え持っていた。


 「す、すみません。集めてくれてたんですね」

 その言葉に彼女は少しほほを染めて


 「た、大変そうだったから」小さな声だった。


 そっと僕に集めた用紙を渡す。

 「ありがとう」

 僕はそれを受け取った。


 「あ、あの」

 「はい」

 「あの、それって小説?」

 「え」

 不意に彼女から出た言葉にドキッとした。


 「え、あ、あのう……そ、そうですけど」