「それって……」

 「多分これから僕はいろんなところで物語を書くと思う。授賞式の時にそう言われた。だから、僕はたくさん物語を書こうと思う。そしてその物語の中に必ず君を沙織を入れようと思う。

もし、何かの廻り合わせで沙織が僕の描いた物語を読んだ時。儚い想いだけど、もし何かを感じてくれてどこかに僕の事を想ってくれればそれでいい」

 沙織は黙って聞いていたその後、何も答えなかった。


 窓の外は、もう雨の音がしていなかった。その変わり、空から白いゆっくりと舞い落ちる雪が、地面を次第にその色を一色に変えようとしていた。

 「沙織。僕のプロポーズ受けてくれるかな」

 そっと沙織に訊いた。沙織はゆっくりと答えてくれた。


 「今の私、喜んで達哉のプロポーズ「はい」と答えます。そして、その後の私からは…………まだ言えない。でも今は「はい」と言える。私は達哉と結婚したい」


 「ありがとう。僕はそれでいい。後の沙織からは気長に待つよ。返事」


 僕はキスをした。沙織と唇を重ね合わせた。いつもしているのに。何故か初めてした時のように、かすかにこすれ合いながら、優しくそして愛おしく沙織にキスをした。

 外の雪はその力を強くして、地上にある地上に描かれているすべてを消し去るように、白く塗り変えていった。
 僕らはそれから、日中お母さんが持ってきたケーキを仲良く食べた。

口にクリームをいっぱい付けながら。白いクリームをいっぱいつけながら……


 こんばんは泊まっていく。一緒にいよう、二人でクリスマスを過ごそう。


 外はもう暗くなっていた。

 僕らは、それからいろいろな話をした。あんなことがあったとか、わざと沙織をプンとさせて、その表情を楽しんだり。いろんな話をした。そして、沙織は眠りについた静かに。

 もうすでに外は真っ白になっていた。すべての色が白一色になっていた。



 今年のクリスマスは

 ホワイトクリスマスになった。



 僕もいつしかベットにうつ伏せて寝ていた。ずっと沙織の手を握りながら……