「大体マリちゃんだってさぁ...」
バタンッ
......え?
亜矢ちゃんが、倒れたァ!?
どうしよう、どうしよう!
さっきの熱っぽいって、本当だったの!?
なのに無理して来て、しかもでかい声で怒鳴ってたから...。
「どうしよう...あたしの、せいだ」
ポロポロと涙が零れてくる。
ゆっさゆっさと亜矢ちゃんをゆする。
けれど亜矢ちゃんはピクリとも動かず、目を瞑っていた。
あたしが途方に暮れかけたそのとき!
「あのう、救急車、呼びましょうか?」
澄んだ、低く淡い声。
あたしが見上げると、心配そうに亜矢ちゃんを見つめる優しい顔の少女がいた。
「あなたは?」
「そんなこと、今はどうでもいいですよね。とにかく、救急車呼んどくんで...」
その少女は淡々と喋り、黙々とケータイの番号ボタンをプッシュしている。
「もしもし?すいません、××駅なんですけど...はい。分かりました」
呆気に取られていると、少女はニコッと微笑んでこう言った。
「もうすぐで来るそうですよ。あなたはなにか用事があったんでしょう?
行ってください。××病院に運ぶそうですから、帰りに御見舞でも行ってあげてください」
すごい、行動力...。
カッコイイ、と素直に思った。
「あの、本当にありがとうございました!」
「いえいえ。それでは、あなたが来るまで私は病院にいますので。
私は今日、暇なのでね。」
「はいっ、分かりました。行ってきます!」
あたしはなぜか、あの少女なら大丈夫だと安心していた。
高ぶる胸を抑えつつ、大会会場へと向かったのだった。
♥.。.:*♥.。.:*結束♥.。.:*♥.。.:*
***亜矢side***
「ん...」
「起きましたか?」
あれ、ここ、どこだ?
アタシ、マリちゃんと大会行く途中喧嘩して、怒鳴って...それで...なんだっけ?
身体を起こすと、ズキリと頭が痛んだ。
「ああっ、無理しないで。林檎剥いたので、食べてくださいね」
...誰だー?このこ。
「あの...誰ですか?」
「アハハ、すみません。
私は山里 陽葵。ヒヨリです。」
「ヒヨリちゃん...」
ぽかんとしているあたしを見て、陽葵ちゃんは優しそうな笑みを浮かべた。
「はい、そうです。お友達は大会かなにかに行きまして、私はあなたを匿いました」
ありゃりゃ。
どーやら随分迷惑を掛けてしまったようだ。
「ごっ、ごめんなさい!」
「いえいえ、大丈夫ですよ。もうすぐ、日が落ちますね。
やがてお友達も、来るでしょう」
「あっ そのお友達、真梨子です。マリちゃんって呼んでます」
多分、マリちゃんのことだよね?
マリちゃん......そもそもアタシが遅れたのがいけなかったのに。
なんで怒っちゃったんだろう...。
まだ、怒ってるよね。もう、自分の馬鹿。
ガラッ!
「亜矢ちゃぁーーーん!あたし、C級になったよ!」
「...え!?」
ま、マリちゃん!?
「どーしたの、来てくれたの!?」
「あったり前!あたしのせいで倒れたわけだし!...あの、その...ごめんね、亜矢ちゃん」
ぺこりと頭を下げるマリちゃん。
その姿に、目頭が熱くなる。
「ううん、アタシこそ、ごめん。逆ギレ、しちゃって...」
耳まで真っ赤になっているのが自分でも分かった。
やさしくさすると、熱く熱を帯びている。
「大丈夫。あたしが悪いんだよ!
そうそう、陽葵ちゃんっていう子がね...」
「助けてくれたんでしょ。アタシのこと」
「うん、そう!...って、そこにいるか」
陽葵ちゃんが気まずそうに頬を掻く。
もう、マリちゃん!(笑)
でもマリちゃんはそんなことお構い無し。
ずかずかと陽葵ちゃんに話しかける。
「陽葵ちゃん、ほんとありがとうね。そういえば、何年生?」
「中1だよ。」
「マジで!?同級生かぁ!大人びてるね、どこ中?」
「楽都中学校」
「「うぇええええええ!?」」
アタシまで叫んじゃった!
だって、まさか楽都中学校だとは!
しかも、同級生...何組だろ?
「陽葵...ちゃん?何組?」
陽葵ちゃんがはにかむ。
「A組です」
「「!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」」
A組!?
同クラジャーーーーーーーーン!
興奮しながらそのことを告げると、陽葵ちゃんは驚いたように言った。
「そうだったんですか!...でも、クラスでは話しかけないでくださいね。
私、勉強に集中したいので」
えっ...。
すご!陽葵ちゃん!
でも楽都中学校だもんなぁ...名門校だし、当たり前かあ。
しかし、話せないのは残念。
ちら、とマリちゃんを見ると、がっくりと肩を落としている。
その様子を見て、陽葵ちゃんは慌てて言い繕った。
「で、でも!ほんとにたまーになら、OKですから!」
ぱあっとマリちゃんの顔が明るくなる。
か、可愛すぎか!