秋山君達を気にしすぎてて、気づかなかった。

「ぼーっとして、大丈夫?」
「あー、うん。何にもないよ。大丈夫。」
「そっか.......。」

そう言うと、歩斗君の表情に少し翳りが出来る。

どうしたんだろう。


今日の歩斗君は少し元気が無い。


「あのね、葉崎さん。」
「うん?」
「.......いや。今、何読んでるの?」

絶対、今何か言おうとした。

内容が気になるのもそうだけど、

「.......。推理小説、だよ。
ねえ、歩斗君。今何か言おうとしたでしょ。」
「あ、いや。」

後悔してほしくない。

真実を知らないままでいるのは、悲しい。

「言わずに後悔するのは、辛いよ。
あの時、ああしとけば良かったって、私、いつも思う。
そう言えば、歩斗君には言ってなかったね。」
「え。」

秋山君と桜ちゃんには話した。

大切な、親友の一人の歩斗君だけ知らないなんて、私が嫌だから。

私に何があったか全部話した。

「辛かったよね。今も、辛い?」

羽根よりも柔らかな声で私に聞いてくる。

歩斗君の声音は今までで一番控えめだった。

「ううん、今は辛くない。過去を乗り越えられたから。」

秋山君の、おかげ。

どんなときでも、君を好きになって良かったって思うんだ。

「それって.......。あー、いや。うん、良かった。
あのさ、葉崎さん?」

何だろう。

さっきとは違う。

いたずらを思い付いた子供より。

ううん、それよりも蠱惑的に。微笑む。


「俺と、夏休みにある夏祭り、行かない?」
「.......え?」