だって、その顔は今まで一度も見たことが無くて。

秋山君の素顔だった。
こんな顔もするんだって、すごくびっくりした。

「葉崎さん?どうしたの?大丈夫?」

そんな私を心配したのか、秋山君が声を掛けてくれた。

「あ、うん!大丈夫大丈夫。じゃあ、また後で。」
「うん。」

私は慌てて自分の席を確認し、席に着く。
その間、ずっとさっきの秋山君の顔が頭に浮かんでいた。


なんだろう。この気持ち.......。



もしかして、焼きもち妬いてるの、私。

私の知らなかった私と、私の知らなかった君の素顔。

桜咲き乱れる春は、変化を求める春だということ。

そんなことに、私は気づく筈もなく、ただ黒板を向いていた。