「秋山君って、家族と暮らしてるの?独り暮らし?」

瞬間、俺の思考が止まる。

なんで、葉崎さんはそんなこと聞いてくるの?
俺の家族は.......。

「どうしたの?急に.......。」

何故彼女がそんなこと聞いてくるのか分からなかった。
今までそんな話してなかったのに。

そしたら葉崎さんは、俺の雰囲気が変わったのに気付いたのか、慌てた様子で、

「いや、特に深い意味は無いんだよ。ただ、私は独り暮らしで、秋山君はどうなのかなって。」

ああ、これは少し怖がらせちゃったかな。
なんて思って、自分を無理矢理落ち着かせて君の質問に応える。

それも、最小限に。

「.......そう、独り暮らしなんだ、葉崎さん。俺も、一応.......独り暮らしだよ。」
「そっか.......。」

きっと、気を使ってるんだろう。考え込むように葉崎さんは相づちを打った。

「そっか。あ、そんだけ!うん、そうなんだー。あはは。」

明らかに動揺してるな、これは。

でも、葉崎さんにまだ俺を知られる訳には行かない。
ここで会うのも楽しいし、俺の数少ないくつろぎだから。

「葉崎さん、」
「え、うん!なに?」

だから自分でも驚いた。今から自分が何を言おうとしてるのかなんて、自分が一番分かってる。

「や、なんでもない。」
「え?うん、そっか。」

いや、嫌だ。
こんなこと言ったら君は俺を嫌うだろう。
安らぎは、壊されたくない。