私の歌で


せっちゃんを自由に。




「♪~~長くて深い夢の奥底に 手を差し伸べてあげる~~♪」




せっちゃんが苦しみだした瞬間、どこからか禍々しい威圧を感じた。


ゾクリと震えるほどの強烈な殺気に、歌を中断せざるを得なくなる。


間違いなく、私に向けられた悪意だった。


今の圧迫感を、私は知っている。



「琉美ちゃん?」


「江藤先輩、すみません」


「え?」



胸が、ざわつく。


確実に、近くにいる。


私を憎んでいる、イービルが。


おそらく、せっちゃんに連絡を受けたイービルは、私達の様子が気になって、ずっと見張っていたんだ。


いや、私達が殺られるところを、見たかっただけなのかもしれない。



「ここ、任せてもいいですか?」


「……わかった」



江藤先輩は、私の思考を汲み取ってくれた。