言うつもりはなかったとか、言いたくなかったとか、そうじゃなくて。


自分の正体も、何も、言ってはいけなかった?


それじゃあ、まるで、誰かに指示されたみたいな言い方じゃないか。


……指示?



「今は、いいの?」


「言った方が、お前らをかく乱できるらしいからな」



せっちゃんは、また「らしい」なんて変な言い方をした。


絡み合っていた糸が、徐々に一本の太い紐となっていく。


それは私に、想定していなかった事実を運んできた。



あぁ、せっちゃんの言う通りだ。


私達は見事に、かく乱されている。



「六沢がイービルじゃ、ないのか?」



感じていた違和感が、消えていった。


よく目を凝らせば、見えてくる。


せっちゃんを纏う、どす黒い霧が。



「せっちゃんの前世は誰?」