答える前の呟きは、何だったんだろう。


せっちゃんの不自然な動作に疑念を抱きながら、私達は屋上前の踊り場へ移動した。



生徒玄関とは打って変わって粛然とした踊り場に、三人の影が薄く浮かび上がる。


カバンを脇に置いて、竹刀をギュッと持つ。


三人しかいない場所に来てすぐにせっちゃんが魔法で私達を攻撃してくるかと思っていたけど、私の思い過ごしだったらしい。



「ねぇ、せっちゃん」


「……なんだ」



私が話しかけたら、せっちゃんは水曜日とは違って返事をしてくれた。



「どうしてこの間は、何も言ってくれなかったの?」



私の隣で、江藤先輩がせっちゃんを睨む。


カバンの持ち手に手をかけたままのせっちゃんが、なんとなく余裕そうに窺えた。



「何も言ってはいけなかったから」


「え……?」



どういう意味なのか、全然わからない。


江藤先輩の方を見ると、江藤先輩も腑に落ちないようだった。