それから、私は一人で、念のために保健室付近を巡回してみた。


けれど、悪夢を見せるウィケッド・ナイトメアを使用したと思われる、イービルの現世らしき人物は、どこにもいなかった。


魔法をかけて、すぐさま退散したのだろう。





私が保健室を出て見回っていた頃。


ずっと閉まっていた、ベットを囲うカーテンが開いた。


保健室の留守番をしていた利一くんは、そのことに一瞬だけ驚く。



「なあ」


「……ど、どちら様ですか?」


「俺は、江藤駿。お前は?」


「ぼ、僕の名前は久賀利一、ですけど」



利一くんが悪のエネルギーに覆われる前から保健室で寝ていたのは、江藤先輩だった。


江藤先輩は、ヘアスタイルを整えながら、利一くんをじっと見る。



「久賀、俺とちょっとお喋りでもしないか?」


「お喋り、ですか?」





――私が保健室に戻った時には既に、江藤先輩の姿はなかった。


利一くんは保健室に江藤先輩がいたことを、私に明かさなかった。