激しく高まっていた感情が沈んでいき、我に返って、利一くんから少し離れる。


今更照れくさくなって、肩をすぼめた。



「あの、琉美先輩」


「な、なに?」



利一くんが気まずそうに話しかけてきた。


もしかして、抱きつかれて嫌だったとか!?


そうだったらどうしよう。


悪い方向に考えすぎて、混乱状態に陥りそうになる。



「……っ」


「利一くん?」



利一くんのいつもとは違う雰囲気に気づいて、利一くんの顔を覗き込む。


利一くんは顔を歪めていて。


辛そうで、悩みを抱えていそうで、複雑な心境を隠していそうで。


ズキリ、と胸が悲鳴を上げた。



利一くんは何か言いたげに、唇をうっすらと開けたが、すぐに口の端を結んで、言葉を飲み込んだ。



「やっぱり、なんでもありません」



へらっと笑ってごまかした利一くんに、私は不格好な笑顔を返すことしかできなかった。