フジヤマが、またタバコをくわえる。

……昔を思い出すのは、やっぱりしんどいのかな……?



「『チャットしてる時はずっと面白いままのフジヤマで居てね』って言ったあと、ユキは『高校生ルーム8』を出ていった。 ……そしてその翌日から、チャットに来なくなったんだ」

「……」

「ズルいよな、言い逃げだぜ? 俺なんかなんも言えなかったかったのに、アイツは自分の言葉だけ残していって……ほんっとズルいよ。
チャット辞めるなら辞めるで言ってくれりゃいいのにさ。 面白いままの俺で居ろ…って、そんな風に言われたら待つじゃんか。 俺が俺のままで居れば、いつかまた会った時に……って、思っちゃうだろ」



フジヤマの声が次第に小さくなっていく。

……そのあとはもう、どれだけ待っても言葉が放たれることはなかった。

静かな車内で、私も何も言えないままだった。


……フジヤマとユキさんがチャットしていたのは、高2の時……17歳の時ってことは、今から6年も前になる。

6年前なんて、私はまだ小学生。

パソコンの扱い方すら知らなかった年齢だ。


……フジヤマは6年間ずっと、ユキさんを待ち続けていたんだね……。

『ずっと面白いままのフジヤマで居てね』って言われたから、ずっとずっと……社会人になってもずっと、そのままのフジヤマで過ごしてきたんだ。


……パソコンの画面を見つめるフジヤマは、毎日どんな思いだったんだろう。

どんな顔でチャットしていたんだろう。


毎日、無理しながら笑っていたのかな……?

私たちと話してる時もずっと、無理矢理に笑っていたのかな……。