「正直、真面目なフジヤマなんか想像出来ないよ」
「いやいや、見ろよ俺のこの真面目な顔っ。 チョー真面目だろ?」
と言ったあと、フジヤマはキリッとした顔でVサインをしてみせた。
……うん、普通に面白い。
「ちょっ、なんで笑うんだよー」
「だって…ふふっ……すっごく、面白いから……」
「ちぇっ。 キメ顔見せて損したぜっ」
なんて言ってるけど、フジヤマ自身も笑ってる。
だから私も笑顔のままだ。
「フジヤマって、やっぱり面白いね」
「だーかーらぁ、面白いのはチャット仲間の前だけだぜ?」
「ふふっ……もしそれが本当だとしても、それでもいいよ。 だって私の前だったら、いつでも面白いフジヤマで居てくれるってことでしょ?」
「おう、チャットの中だったらな。 リアルじゃ保証は出来ねぇよ」
再び車を発進させ、フジヤマは微笑む。
「さっき見てわかっただろうけど、リアルの俺は普通にヘコむし弱音も言う。 でもチャットの中では そういうのを見せないようにしてるんだ。 それがユキとの約束だからさ」
「YUKI……ううん、ユキさんとの、約束……?」
「そ、カタカナの方のユキ。 まぁ、約束っつーか、一方的に言われたことなんだけどね」