「ユージ、またねっ」



人混みの中で言った私の声は、すぐにかき消されてしまったけれど。

それでもユージは笑っていた。

私と同じように、満たされたような顔で。


……バイバイ、ユージ。

またね。

絶対にまた、会おうね。


そう強く強く思いながら、私はいつまでも手を振っていた。






「さーてと、これからどうする?」



時計を見ながらフジヤマが言う。



「サクラは電車の時間まで30分くらいあるだろ?」

「うん」

「じゃ、俺とデートする?」


「……はい?」



え、なにそれ。

デート?

……えぇっ!? デートって、“あの”デートですかっ……!?



「え、えーっと、つまり……デートとは男女が二人きりでする“あの”デート……ですよね……?」

「おう」

「……いやいや無理だからっ」


「大丈夫大丈夫っ」

「根拠のない『大丈夫』ほど不安なものはないんですがっ……!!」



なんて言い合ってる中で、フジヤマに手を握られた。

そしてそのまま、駅の外へ……。