「……家族、か……」
画面に表示されている『高校生ルーム8』を見つめ、小さく息を吐く。
そのあとYUKIから貰った手紙を引き出しから取り出して、また静かに息を吐き出した。
「……もしもユキさんが家族だったら、なんでこんな風に書いたんだろう……」
2枚目の手紙に、そっと指を這わす。
YUKIはそこにこう書いている。
『フジヤマの他にも忘れられない人が居る』と。 『8月のある日を境に、ユキはチャットから姿を消した』と。
……家族だったら、こんな風には書かないよね?
家族なら、どうしてユキさんが姿を消したかを知ってるに決まってる。
全部を知ってる人間は、こんな風には書かないよ。
「……あ、でも……YUKIがこの手紙を書いた時は、私がユキさんのことをフジヤマから聞いてたなんて、知らないんだよね……」
昔、チャットに『ユキ』という人が居た。
フジヤマはその人と仲が良かった。
突然居なくなってしまったその人を、フジヤマは今でも待ち続けているのかもしれない。
だからその人の真似をして『YUKI』という名でチャットしていた。
……YUKIがそのことを伝えるのに、家族かどうかという情報は必要ない。
手紙の送り先がフジヤマならともかく、“私”だったから。
ユキさんを知るはずのない“私”が相手だったから、YUKIは何も言わなかったのかもしれない。