私、佐久間 梅(サクマ ウメ)のチャットネームは『サクラ』だ。
ウメという古くさい名前が大嫌いで、チャットの中くらいは可愛らしい名前を……と思って名前をつけた。
そんな私、サクラが“彼ら”と出会ったのは、高校に入学した今年の5月。
チャット自体は中1の時からやってたけど、受験があったからここ1年くらいはパソコンに触っていなかった。
そして、無事に高校生となり……久しぶりにチャットした時に、みんなと出会ったのだ。
『ユージ』は高校2年生で、私の1つ先輩と言っていた。
だけどチャット内で敬語を使うことなんてほとんどない。
というか、チャットってタメ口が当たり前の世界なんだよね。
だから私はタメ口で話しかけて、ユージも当たり前のように私を受け入れてくれていた。
ユージは人を笑わせるのが得意で、どんなに真面目な話でもすぐにネタにして、ボケてボケてボケまくる。
『お前はお笑い芸人か?(笑』と、みんなにしょっちゅう言われているくらい面白い人だ。
そんなユージといつも笑い合っているのが『フジヤマ』。
年齢不詳。 で、自称イケメン……らしい。
フジヤマは『俺らの時代はー』ってよく言ってるから、多分 私よりも年上だと思う。
20代後半、もしくは30代かも?
それなのにフジヤマは『高校生ルーム8』に居て、私たちと常に話している。
『俺はここのヌシだからいいんだよw』なんて言って笑ってたっけ。
そして最後の一人は、20歳の女子大生『YUKI』。
YUKIも高校生じゃないけど『高校生ルーム8』に居る。
『私は永遠の16歳!!』、『心は常に16歳!!』っていうのがYUKIの口癖だ。
で、フジヤマに『ババア』って言われてYUKIが怒るのも、お決まりの流れ。
YUKIとフジヤマはいつも言い合いをしてるけど、仲はいい。
私とユージがログアウトしたあと、いつも二人で深夜まで話をしてるみたい。
高校生にはわからない『でぃーぷな話』……らしい。
ユージもフジヤマもYUKIも、個性豊かで一緒に居て飽きないメンバー。
そんな3人と出会ってからもう2ヶ月も経つ。
季節は夏。
7月の終わり──夏休み真っ只中だというのに、私はチャットに入り浸っており、他の3人もそうだった。