「……あっ、また忘れるところだった。 はい、日傘っ」

「あぁ…すっかり忘れてた。 うん、じゃあ持って帰るね」

「YUKI、もう夕方だけどまだまだ暑いから、倒れないように気を付けてね?」


「それはこっちのセリフ。 ほら、もう行かないと乗り遅れるよ?」

「……やっぱり17時34分のじゃダメ?」

「ダメ」



うぅ……ケチ。

私だって、YUKIをお見送りしたいのに……。



「またチャットで話そ? もちろん、メールもするよ」

「……うん。 じゃあ、またね……?」

「またね、サクラ」



微笑むYUKIが、私に手を振る。

だから私も微笑んで、YUKIに手を振り返した。



「……バイバイ、またねっ」



そう言った私に、YUKIは小さく頷いて応えた。

とても優しい笑みを浮かべながら……。






今日は、YUKIのことを色々と知れたと思う。

YUKIの本当の年齢や、誕生日のこと、そして…大切な人のこと……。

本当に、色々なことを聞いた。


……これから先、私はもっともっとYUKIのことを知っていくのかな?

それとも、これ以上はない?


……チャットで知り合った友達の『リアル』は、どこまで知っていいものなんだろう?

聞いてもいいことと、ダメなこと……色々ある中で、YUKIは私にどこまで話してくれるかな?

YUKIだけじゃなくて、ユージも、フジヤマも……そして、私自身も。

どこまで『リアル』を言えるだろう?

自分のことをどこまで言えて、みんなのことをどこまで受け入れられるだろう?

……と、そんなことを思いながら電車に乗り込む。



──こうして私とYUKIの2度目のリアルは幕を閉じた。



そして、『サクラへ』と書かれた手紙が荷物の中に入っていることに気付いたのは、家に到着したあとだった。