「なんか、フジヤマに『買え』って言われてる感じがするから買うことにした」
「あははっ、なんとなくわかるっ。 じゃあ私もそれ買おうかなー」
「ダメ、サクラはこっち」
そう言って、YUKIは8月17日のストラップを私に差し出した。
「これを見るたびに俺を思い出すだろ?」
「えっ……」
「……なんてね。 ごめん、ちょっと言ってみたかったんだ。 サクラ、顔赤いよ?」
「だ、だって……あんな風に言われたら、誰だってドキッとするよっ……」
……ビックリした。
『これを見るたびに俺を思い出すだろ?』なんてセリフ、漫画の中だけだと思ってた。
冗談だったとしても、まさかそれが自分に放たれるとは……。
「で、どうする? 見るたびに俺のことを思い出したい?」
「……自分のを買う」
「そっか。 じゃあ見るたびにユージのことを思い出せるね?」
「……っ……」
YUKIってば、ほんっと意地悪っ……。
そりゃ、私とユージは同じ日生まれだけどっ……でも、『常にユージのことを』なんて言われたら、すっごく意識しちゃうじゃんっ……。
「……YUKIこそ、そのストラップを買ったらフジヤマのことをいーっぱい思い出すねっ」
よし、言ってやったぞっ。
意地悪の逆襲だ、ざまーみろっ。
……のつもりで言ったんだけど、私の言葉を聞いたYUKIは楽しそうに笑ってから髪をかき上げた。
「俺はフジヤマを常に感じていたいから、全然平気だよ」
「え……なんかそれ、変態っぽいセリフだね……。 そのストラップ、本当に買うの?」
「うん、買うよ。 30日と31日のやつ、2つとも俺には必要だから」
30日のはともかく、31日のって必要なのかなぁ……。
って私は思うけど、YUKIはなんだかとっても満足そうな顔してる。
……だから多分、YUKIには必要なものなんだと思う。
うん。
YUKIがいいなら、それでいい。