「サクラって、最後に水族館に来たのはいつ?」
「んーっと、小学校の遠足の時かな」
「親と来たりはしなかった?」
「あー……うちの親ってさ、二人とも仕事が命!! なの。 だから家族で遠出すること自体、かなり少なかったなぁ……。 YUKIはどう? 家族でお出かけとか、小さい頃はいっぱいしてた?」
「ううん、全然。 ……本当はあちこち行ってみたかったけど、ワガママ言えるような状況じゃなかったから」
どこか寂しそうに言いながら、YUKIは歩き出す。
手を繋いでいたから、私も一緒に歩き出して隣に並んだ。
そんな私を見て、YUKIは微笑む。
「家族で遊びに行く時間とかは少なかったけど、それでも両親は俺を大事にしてくれていた。 それはちゃんとわかってるんだ。 だから俺はグレることなく、ここまできちんと成長しました。 と思います」
「……ふふっ、確かにそうだね。 ネカマするような人だけど、ちゃんと大学生だもんね」
「ネカマと大学生なのは関係なくない? ていうか俺、本当は──」
……と何かを言いかけたYUKIは、直後にハッとした顔をした。
そしてそのまま、言葉を飲み込むかのように口元に手をやった。
「……YUKI?」
「──……いや、ごめん。 なんでもないよ」
……なんでもない。 って言ってるけど、全然そんな風には見えない。
焦ったような顔をして、困ったように笑って『なんでもないよ』と呟くなんて……そんなの、『何かある』ってわかるじゃん。
ねぇYUKI。
『本当は──』……の、続きは何?