「サクラ」
「ん? どうしたの?」
あと5分ほどで水族館に着く。 という時に、YUKIが声をかけてきた。
「あとで、ちゃんと話すよ」
「……え?」
「話があるって言ったのは嘘。 って言葉が嘘なんだ」
……ん?
えっと、つまりそれって……YUKIは、やっぱり私に話がある……?
「どのタイミングで言うかは俺もまだわからないけど、ちゃんと言うよ」
「……うん、わかった」
優しく笑うYUKIは、私の手をさっきよりも少しだけ強く握りしめた。
だから私も握り返す。
……だって、手を離したらYUKIが消えてしまいそうだったんだもん。
混雑するバスの中だから、消えるはずなんてないのに……でも、YUKIが私の前から居なくなってしまうんじゃないかって、そう感じたんだ。
「……YUKI、あのっ……」
「うん?」
「えっと、その……ちゃんと隣に居てね? 水族館の中でYUKIと はぐれちゃったら、私……」
「大丈夫、ちゃんと居るよ」
「……うん」
微笑むYUKIに私も笑みを返す。
そのあとはまたお互いに無言になったけれど、私はYUKIの手をギュッと握りしめたままだった。
YUKIが消えてしまわないようにと、強く、強く……。