ーside遥香ー

熱を出してから3日経った。

未だに怠さはあるけど前ほどではなくなった。

起きていてもそれほど辛くはない。

でも、血圧は上がってないからまだ退院はできない。

このことで、少しだけ目が覚めた。

どれだけ頑張ったとしても、自分の体調を管理できないなら、勉強はやらない方がいいのかもしれない。

尊が言ったように、休むことも必要なのかもしれない。

入退院を繰り返す私は焦っていたのかもしれない。

授業も出れないことが度々あるから他の子に比べたら勉強も追いつかないっていうことに。

だけど、今までも勉強は遅れた事はなかった。

だから、自信を持っていいってことに気がつけた。

また、尊に助けられたな。

そんな事を考えていると

「遥香。」

まさか、あの声は…

ドアの反対側から聞こえるあの日以来会っていない母親の声。

でも、どうしてこんなところに?

「遥香ちゃん。」

近藤さんの声も聞こえる。

近藤さんがいることに安心はしたけどやっぱり怖い。

実は、母親に散々言い合ってからは1度も会わず2年が過ぎていたから。

あの事、怒られるのかな…

ちゃんと向き合えたはずの母親が未だに怖い。

そう考えると、返事ができなかった。

中々返事ができない私に気を遣った近藤さんが入ってきた。

「遥香ちゃん。遥香ちゃんのお母さんは、無理に会わなくてもいいって言ってたわ。まだ自分のことが1ミリでも怖いと感じるなら扉を開けなくてもいいって。決心ができたらいつでも連絡していいって。」

私は驚いた。
あの日会って、言い合っただけなのに人ってそんなに変わるものなの?

だけど、本当に変わったかなんて会わないと分からないし、一緒に過ごしてないと分からない。

私は、どうするべきなんだろう。

近藤さんの言うことは信用出来る。

近藤さんが嘘をつかないことを私は昔から知っている。

それでも、母親の裏をかいてしまう。

口ばかりで心から変わってないんじゃないかって。

私は答えが出せずに考え込んでしまった。