夏凪翔は少し驚いていた。


美夜と賢迅の記憶は5歳位からなのに夏凪翔だけはいつも私の記憶のどこかにいる。

お互いを大事に思うほど意見はすれ違ってゆく。

そんな矛盾した意見はなくなって欲しかった。

夏凪翔は少々躊躇していたが「おいで」と、いわんばかりに両手を広げた。

私は周りに誰もいないことを確認してから夏凪翔の胸に飛び込んだ。

私が飛び込むと夏凪翔は逞しい腕で優しく包んでくれた。

今までの出来事を全て洗い流すかのように入ってくる夏凪翔の熱はとても安心できた。


「ごめん夏葉。俺お前だけは失いたくない。ごめん。」


それは私も同じだよ。と言いたかったが、何が私の声を遮った。

ただ静かに夏凪翔の腕の中で泣いた。

自分たちが背負わされた運命と宿命にただ嘆く事しか出来なかった。

夏凪翔はずっと背中をさすってくれていた。