「でもね」


となーちゃんは続ける。


「東雲澪はそのリスクを知っていた上で紘那を家に連れてきた。それってさ、少なくとも紘那に対して好意があったってことじゃないの?」


そう思いたい。
期待したい。


なーちゃんの言ってることも確かだと思う。
でも、期待して違かったら私は落ち込んじゃうから。
それだけは嫌だから。


「澪君は、天然だから。気が向いただけだよ、きっと」


私は漆黒に染まる窓の向こうを見つめた。
光にたかる小さな虫が、たまにガラスにぶつかる音を立てる。


「もし、何かあったら」


よいしょと立ち上がりながらなーちゃんは言った。扉に手をかける。


「私は笑わずに聞いてあげるよ」


その姿は本当に頼もしくて、その背中は本当に大きく感じた。

私は思わず、そんななーちゃんに抱きつく。

「なんだよー!離れろ!」と言いつつもなーちゃんは嬉しそうだった。


「ごはんだよーー!!」


一階から聞こえてくるお母さんの呼びかけに、私たち2人は「はーい!」と揃って返事をすると、カレーの匂いのする廊下に飛び出した。