様々なゲームが並ぶ室内に足を踏み入れる。


「あ、これ可愛い」


澪君が目をつけたのはうさぎと猫が1組になっているマスコット。
ガラス越しに積み上げられているうさぎと猫たちは本当に愛らしい。


「この猫、俺に似てない?」


自分のことを指差しながら澪君は興奮気味だ。
垂れ目がちで気まぐれな彼は、確かに猫っぽい。


「よーし」


私は腕まくりする澪君を少し離れたところで見守る。


一回目。


ものすごく慎重にボタンを押してクレーンを操作しているわりに、クレーンは何も掴むことなく定位置に戻ってきた。


「えぇーー。うそーん」


もう一度!と再び100円玉を入れる。

明快な音楽が鳴り始める。



2回目も同じ具合だった。

3回目も。



だんだん悔しそうな顔になっていく澪君は本当に可笑しくて、私は笑いを堪える。

澪君は真剣そのもの。


4回目。


これがダメだったら止めよう。

私はそう思っていた。