お母さんはお昼ご飯に、オムライスを作ってくれた。
絶対に澪君が自分で作ったオムライスの方が美味しいはずなのに、澪君は「美味しいです!」と何度も繰り返していた。
お母さんもすっかり気を良くしてしまっている。
私は内心呆れながら、嬉しそうな澪君を見れたから、まぁいいかと大目に見ることにした。


「私、今度澪君のオムライス食べてみたい」


自室へ向かう階段の途中で、私は本音を漏らした。
澪君は目を丸くして、「お母さんのも美味しいじゃん」と言った。
「そうだけど」と口を尖らせながら、相変わらず抵抗がある、自室の扉を開いた。


「いいよ、今度作ってあげる」


澪君はご機嫌に鼻を鳴らし、すっかり慣れた様子で私のベッドの上に座った。
憧れのアイドルが自分の部屋にいるという違和感を拭いきれない私には、さっきから刺激が強すぎる。


「やった」


私が小さくガッツポーズをすると、「なにそれ、可愛い」と、澪君も真似をする。
本当に本当に本当に、ぐうの音も出ないほど可愛い。


「さぁさぁ、荷造りしてくださいお嬢さん」


澪君は私の毛布を手繰り寄せると、そのまま自分の体に巻きつけて、ミノムシみたいになる。
私は可笑しくて笑ってしまいそうになるのと、自分の布団を巻きつきているこの状況に、止まらないにやにやを懸命に押さえ込みながら、「そうだね」と鞄を持ち出した。