あの日のライブを思い出して、胸が熱くなる。
「そしたらさ、家に帰ろうとして駅に行ったら、紘那が泣いてるんだもん。声もかけたくなるよ、そりゃ。…なにより、運命を感じちゃって、ついほっとけなくなっちゃったんだ」
あの日の、ハットの奥で微笑む澪君を思い出す。
今思えば、あの時間なら東京までの電車、まだあったよね。
「最初は一晩だけ泊めてあげて、すぐに帰らせる予定だったんだ。
でも、紘那の笑顔を見たら、できなくなった。
話してると素直で、純粋で、気取ったところもない人柄が見えてきて…一緒にいるうちに、恋に落ちてた。
もう会えないなんて嫌だって…そう思ったんだ」
恥ずかしそうに髪をいじる澪君が可愛くて、私の心がキュンという音を立てる。
知らなかった。
澪君の気持ち。
嬉しさが心の中を彩っていく。
「離れてからも、頭の中は紘那ばっかりだったんだよ。
いつでも紘那に会いたくて、胸が苦しかった。でも、俺と付き合うことになったら、寂しい思いをさせちゃうことも分かってて、すごく悩んだんだ。
そんな時にさ、気付いたんだ。
俺が最近、卑屈にならずに頑張れているのは、紘那がちゃんと見てくれてるからだって、
応援してくれてるからだって。
俺は、そんな紘那といつまでも一緒にいたいんだって。
だから、告白するのを決めたんだよ」
そっか。だからさっき、私と出会う前の自分に教えてあげたいなんて言ってたんだ。
頭の中の点と点が繋がった。