「澪…君?」
リビングのテーブルに、なぜか父と母と向き合って座り、こちらに顔を向けて笑う澪君がいた。
間違いない。
本物だ。
カサ…と、紗乃からのプレゼントの袋が落ちた。
立ちすくんでしまって動けない私を見て、澪君はわざわざ立ち上がると、私の近くまで来てくれた。
私の手を優しく引いて、澪君の隣の椅子に座らせる。
「いやぁ、びっくりしたよ」
少し酒臭い父の大きな声に、私は肩をビクつかせた。
「突然紘那の好きなアイドルが、うちに来るからさぁ!!」
がははと豪快に笑う父に、もう少し行儀良くできないものかと、私はため息をついた。
「まさかあんたが澪君と付き合ってたなんてね、気を失いそうだったわ」
お母さんも可笑しそうに笑う。
もぉ!なにこれ!!!
「いや、まだご挨拶してないなぁって思って来て見たら、案の定。紘那のご両親、俺たちがお付き合いしてること知らないんだもん」
くっくと腹を抱えて、綺麗に通った鼻にシワを寄せて笑う澪君。
私はぷくっと口を膨らませた。
今まで心の底に降り積もっていた寂しさが、澪君の笑顔で一気に溶かされていく。
優しい気持ちが、胸いっぱいに広がっていく。